施設訪問してみました!

脊椎圧迫骨折は早期対応することが重要。痛みがないと気付かない、効果が実感しにくいので治療が続かないのが骨粗鬆症。

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脊椎圧迫骨折は早期対応することが重要。痛みがないと気付かない、効果が実感しにくいので治療が続かないのが骨粗鬆症。

草加松原整形外科医院 院長 松本眞彦先生
副院長 松本和之先生

プロフィール

院長の松本眞彦先生は開院時より多くの手術を手がけるとともに、急性期の治療を終えた患者さんのためのリハビリテーション病院や、通所リハビリにも対応する介護老人保健施設などを運営しております。2021年より副院長を務める松本和之先生は、整形外科領域の中でも脊椎を専門として、長く獨協医科大学埼玉医療センターで臨床に携わり、その経験をベースに現在も週に何例もの脊椎手術に執刀されています。

骨粗鬆症が原因の椎体圧迫骨折への手術は全国的に多いそうですね。

松本和之副院長 松本(和)

脊椎の圧迫骨折は骨粗鬆症性脆弱性骨折の中でも最も数が多いです。特に超高齢社会となり患者さんが増加しております。脊椎圧迫骨折に対しては、コルセットを装着し骨が形成されて痛みが落ち着くまで、1ヵ月から2ヵ月程度安静を保つ保存療法が一般的ですが、痛みが取れない方や行った期間経過後もグラグラと不安定な場合は手術をすることもあります。手術は脊椎を固定する手術や経皮的椎体形成術(BKP)という、つぶれた椎体をバルーンで膨らませ、そこに医療用セメントを注入して固定する手術もございます。痛みをいち早く緩和させられ、8割くらいの方が術後1週間以内には自宅に戻れますので、患者さんにとっての選択肢の一つになります。

骨粗鬆症の現状についてどうご覧になっていますか?

松本眞彦院長 松本(眞)

骨粗鬆症は病気であると同時に時代の流れが生み出した現象という側面も大きいと感じています。超高齢社会となり健康寿命と寿命の乖離が大きくなっていることと、ご高齢の患者さんはそもそも骨粗鬆症の概念もなく、骨折を機に初めて認識するという方が少なくありません。また、骨粗鬆症の治療は継続して治療することが重要であるため、患者さんが自宅で自立した生活ができるまでを途切れることなくフォローする体制を整えることが重要だと考えております。骨粗鬆症を発症する方の絶対数がこれほど多くなったのかという印象を受けています。

治療を進める上で重視しているのはどのような点でしょうか?

松本和之副院長 松本(和)

骨粗鬆症の一番のデメリットは骨折を引き起こすことであり、その防止をゴールとして治療介入するのが一般的だろうと思います。患者さんにはこの点をよく説明して理解していただく。そして意識をもって治療に参加し継続していただくことに一番気をつけています。例えば、治療薬を3ヶ月続けたがもういいやと止めてしまう、そんなケースをつくらないことが重要です。原発性の骨粗鬆症は、10代の頃からの食生活や運動など生活習慣上の問題、あるいは女性の閉経後のホルモン分泌、糖尿病など様々な成因が長年蓄積した結果です。それを半年くらいで治せるものではないですよ、何年もかけて治療をしなくてはいけません、というお話を最初にするよう心がけています。

骨粗鬆症による骨折を防ぐために、早い段階からの備えが重要ですね。

松本眞彦院長 松本(眞)

日常生活ではバランス良く栄養を摂ることに加え、転倒による骨折を防ぐために運動機能の維持も重要であり、筋力、特に下肢筋力の維持を心がけたいものです。例えば、ウォーキングも良いのですが、その際には30分ダラダラと歩くよりも5分間一生懸命に歩くことが肝心です。しっかりと手を振って、一定のスピードを維持し、筋肉に負荷をかけるように意識しましょう。また、現代はイスに腰掛ける生活が定着していますが、そこにも筋力低下の要因が隠れているように思います。昭和より以前の暮らしでは、食事は床に座って食べる、寝る時も布団を敷いて、起きたらそれを畳んで押し入れにしまうといったように、立ったりしゃがんだりの回数が多かったものです。床からの立ち上がり動作には、脚力と体幹バランスが必要で、それらが生活の中で意識せずに鍛えられていたのですね。日常の自然な動きで筋力の維持が図られていた昔の暮らし方を見直すことも大切ではないでしょうか。

今後の骨粗鬆症治療に対する思いを伺えますでしょうか。

松本和之副院長 松本(和)

手術で直に骨を見たり、触れたりすると、良い骨・悪い骨があることがはっきりとわかります。その良し悪しに大きく関わるのが、骨密度とともに最近着目されている「骨質」であり、例えるなら、鉄筋コンクリートの鉄筋部分です。骨のコラーゲンにより形作られているこの鉄筋が細くなっていたり、錆びていたりすれば、骨質の低下を招いてしまいます。手術に携わっているからこそ実際の感覚で把握できる骨質を意識しながら、薬剤選択を含めた治療を行っております。施設によっては海綿骨構造指標(TBS)の測定も行うことが可能となっており、様々な観点から今後も骨粗鬆症治療戦略を考えていきたいです。

病院紹介

草加松原整形外科医院
埼玉県草加市松江2-3-26

手術を行う有床診療所として1988年に開院。現在は、青柳分院、草加松原リハビリテーション病院、さらに複数の介護関連施設を運営し、地域の医療と介護をトータルに担っている。

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