骨粗鬆症Q&A 原宿リハビリテーション病院 名誉院長 林 泰史 先生

痛みについて

腰の痛みが続くため受診したところ、骨粗鬆症による腰椎(ようつい)の骨折と診断されました。この痛みはずっと続くのでしょうか 腰椎圧迫骨折直後の痛みは強いですが骨がつながる頃には軽くなっていきます。稀に骨がつながらないことがあり、いつまでも痛みが続くようでしたら、再度医師に伝えましょう。

背景
(静岡県:80歳女性)骨粗鬆症と診断され、食事と運動で治療していましたが、尻もちをついて倒れ、骨粗鬆症による「脊椎椎体(せきついついたい)圧迫骨折」と診断されました。寝込まないようコルセットをつけて痛みを抑えつつ治したのですが、半年経った今でもときどき激しく痛みます。こんなことがあるのでしょうか。

骨粗鬆症の骨折で最も多いのが背骨や腰骨の骨折です。骨折には、少しずつ骨が潰れていき、気がついた時には骨が半分ぐらいの大きさになっている「脊椎椎体変形」や、骨が割れるように潰れる場合があり、質問者の女性の「脊椎椎体圧迫骨折」は骨が割れるように潰れる骨折の典型的なものといえます。
症状と痛みについて

脊椎椎体圧迫骨折は、尻もちをつくなど、腰骨に大きな力が一度に加わった時に起こりますが、脊椎椎体の骨は血液が多く、スポンジのように入り組んでいますので、比較的早く骨はくっつきます。骨がつながる2~3週間後には痛みは軽くなっていきます。ところが、80〜90歳代の高齢者が増加している現在、超高齢者の脊椎椎体圧迫骨折の中には、骨が非常に弱くなっているなどでいつまで経っても骨がつかない脊椎椎体圧迫骨折もあることがわかってきました。

骨がつかないのはひびが何重にも入り、脊椎椎体の中央部につながる血管が遮断され、中央部の骨を作る細胞が増えてこないのが原因です。また、骨折後、動かすのが早すぎて骨がつきにくい状態になっていることも原因となります。

骨折してから骨がつかないままの状態を「偽関節(ぎかんせつ)」といい、脊椎のレントゲン検査やMRl検査で診断されます。偽関節により強い痛みがある場合は、骨折部をつきやすくする手術がありますので、主治医の先生にもう一度、診察してもらってください。

痛みがなくなっても治療を続ける必要があるのでしょうか 骨粗鬆症の治療は痛みがなくなっても、再び痛みが生じないように骨量を増やす治療を根気よく続けましょう。

背景
(鳥取県:68歳女性)半年ほど前、孫を抱き上げたとたん、腰から背中、胸がひどく痛みました。病院で診てもらったところ、骨粗鬆症により背骨が潰れていると診断されました。痛みのひどかった2週間ほどは家で休んでいて、その後は注射と飲み薬による治療を続けています。最近では痛みはすっかりなくなりましたが、今後も治療を続ける必要があるのでしょうか。

骨粗鬆症では、振り向いたり、物を持ち上げたりした時など、ささいな動作で腰骨や背骨が潰れてしまうことがあります。骨が潰れると腰や背中に激しい痛みが生じ、横向きに休む以外に身動きができなくなることも珍しくありません。
症状と痛みについて

しかし、痛みの治療で何週間も休んでいると筋力が落ち、再び歩くのが困難になることもありますので、早く痛みを和らげて動けるようにする必要があります。そのため、痛み止めの薬と骨粗鬆症の痛みを抑えるためにカルシトニンの注射をしたり、コルセットなどを使って、3~4週間以内に、立つ、歩くなどの訓練をして治します。

腰や背中の痛みがなくなっても、骨粗鬆症自体は治っていません。骨粗鬆症が原因で骨折したのですから、再度、ささいな動作で背中や腰の骨を潰すことがないよう、治療を続けて骨を根本的に強くする必要があります。日常生活では「カルシウムの多い食事」、「適度な日光浴」、「毎日の運動」の3つを守り、それに薬による治療を加えると有効です

骨を強くする薬には、テリパラチド、抗RANKL抗体、抗スクレロスチン抗体、ビスホスホネート剤、活性型ビタミンD3、ビタミンK、選択的エストロゲン受容体修飾薬(SERM)などがあり、年齢や症状に合った薬が処方されます。根気よく治療を続けて骨を強くし、再び骨を潰さないようにすることが肝心です。

腰や膝、最近では背中も痛むようになりました 膝まで痛むとのこと、痛みの原因が1つなのか、重なっているのかを判別する必要があります。整形外科の医師に診てもらいましょう。

背景
(群馬県:36歳女性)2、3年前から腰や膝に痛みがあり、骨が変形していると診断されました。友人にも猫背と言われます。半年前から背中も痛くて眠れません。処方された薬は胃が痛むので、今は胃薬しか飲んでいません。十二指腸潰瘍、急性膵臓(すいぞう)炎および骨粗鬆症と診断されています。どうすれば痛みが減るでしょうか。

骨粗鬆症による脊椎の骨折では腰や背中に激痛を生じますが、骨がつながる2~3週間後には痛みが軽くなってきます。また、背骨が潰れて徐々に変形して、円背(えんぱい、いわゆる猫背のこと)が生じますと、筋肉に痛みを来しますがその場合でも、夜眠れないほどの強い痛みはない事が多いです。 

骨粗鬆症以外に十二指腸潰瘍、急性膵臓炎と診断されているようですが、これらの病気でも腰や背中に強い痛みを生じます。痛みの原因が内臓の病気によるものかどうか、その他の病気が影響していないか、よく診てもらった方が良いでしょう。
症状と痛みについて

いずれにしても、骨粗鬆症と診断されて背中が丸くなってきているようですから、骨粗鬆症の治療も必要です。飲み薬以外にも骨を強くする注射薬もありますし、骨の痛みを和らげるカルシトニンの注射や、痛み止めの軟膏・湿布薬により痛みを減らすことができます。このほか、コルセットやマッサージも効果があります。

何よりも重要なことは、日々の生活習慣です。乳製品、海産物、緑黄色野菜などカルシウムを多く含む食物を摂る、戸外に出て日に当たる、転倒しないように気をつける、毎日適度に体を動かす、などに気をつけましょう。運動は、散歩や買い物など軽いものから始め、徐々に運動量を増やすようにしましょう。骨を強くするには時間がかかりますが、根気よく続けることが大切です。
予防と治療のヒント

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