骨粗鬆症Q&A 原宿リハビリテーション病院 名誉院長 林 泰史 先生

生活習慣について

運動を勧められました。どんな運動をどのくらい行えば良いのですか まず軽い運動から始めましょう。今まで運動の経験がない場合、いきなり無理な運動を始めるのは避けてください。仕事や家事などの日常生活や趣味の中で身体を動かすのも運動です。ご自分の体と相談しながら楽しむくらいの気持ちで、無理をせず継続できる運動がお勧めです。

背景
(福岡県:62歳女性)骨粗鬆症の治療を続けて半年になります。今では腰や背中の痛みもあまりなく、それほど不自由は感じません。お医者さんから「適度な運動をした方が良い」と言われたのですが、これまで特に運動をしたことがないので、少し不安です。どんな運動を、どのくらいすれば良いのでしょうか。

最近の国民栄養調査によりますと、中高年女性で運動習慣のある人は5人に2人程度で、多くの女性はあまり体を動かしていません。運動不足は骨粗鬆症の原因の1つとなっていますので、ぜひ運動を始めてください。

ただし、普段あまり運動したことがない人が急に無理な運動を始めますと、膝を痛めたり、転んだりしますので逆に注意が必要です。散歩や家事、庭仕事、買い物などでも良いのです。比較的軽い運動を毎日30分程度行うことから始めましょう。

平均52歳の女性20人が、30分の散歩と牛乳1本を飲むことを毎日続けたところ、1年後には全員の骨のカルシウム量が増えていたという報告があります。また、70歳前後のゲートボール愛好者の骨のカルシウム量を4年間にわたって調べた結果、運動を続けていた人は、高齢であっても骨のカルシウム量が増え続けていたことがわかりました。

このように、年齢とは関係なく運動は骨を強くしますし、室内でできる軽い運動や趣味としての運動、掃除・洗濯などの家事でも十分というアメリカのデータもあります。毎日の生活に30分程の散歩や買い物などを加えて、“コツコツ”と骨を強くしていきましょう。
骨粗鬆症と骨折の予防

タバコやお酒は、カルシウムの吸収にどんな影響があるのでしょうか カルシウムの吸収を妨げるタバコは極力やめて、お酒はほどほどに。

胃腸の透視をしながらタバコを吸いますと、一瞬のうちに胃と腸の働きが止まってしまいます。タバコは胃腸の働きを押さえる力が強く、カルシウムの吸収も妨げます。また、女性にとって、骨を守る大切なホルモンであるエストロゲンの働きを低下させます。従って、タバコを吸う女性は骨粗鬆症になりやすいです。

また、アルコールは尿を出す働きを強めますので、カルシウムも尿といっしょに排泄されてしまい、カルシウムの欠乏による骨粗鬆症を招きます。さらに、大量の飲酒はカルシウムの腸管からの吸収を妨げます。

男性は骨粗鬆症になりにくいのですが、お酒をよく飲む人は、若くても骨粗鬆症になることがあります。もともと骨粗鬆症になりやすい女性がお酒を飲むと、骨粗鬆症のリスクはさらに高くなります。タバコもお酒も、それらを楽しむ方には緊張をといてリラックスさせる点で良いのですが、骨粗鬆症予防のためには、控えるようにしましょう。
予防と治療のヒント

骨のためには日光浴が大事だと聞きましたが、浴びすぎは良くないのでは 骨によい日光浴とは日焼けするほどではなく、ほんの少しの日光浴で大丈夫です。

背景
(滋賀県:71歳女性)骨粗鬆症と診断されました。日光浴が大事だとお医者さんから言われましたが、若いころから皮膚が弱く、夏などに日なたにいると、すぐに肌が赤くなります。また、日光を浴びすぎると皮膚がんになる危険があるとも聞きました。どのくらい浴びるのが良いのでしょうか。

日光に含まれる紫外線は、皮下脂肪中にたくさん含まれている“ビタミンDの素”をビタミンDに変える作用があります。ビタミンDは、骨を作ったり削ったりする細胞の働きを活発にするほか、食べ物で摂ったカルシウムを腸で吸収して血液に送り込みます。ビタミンDの働きによって血液に送り込まれたカルシウムは、骨を作る細胞の働きを活発にします。これが、日光浴によって骨が強くなる仕組みです。

6㎠の皮膚を3~4時間太陽に当てますと、1日に必要とされるビタミンD(100単位)が形成されることがわかっています。このことから、顔と手を1日2分間日光に当てれば、十分なビタミンDが形成されることになります。肌の弱い人は、夏は紫外線量が10~20%低い木陰に30分間程度、冬であれば、顔や手に日光が当たるようにして1時間も戸外にいれば十分です。

日光に弱い皮膚の方や皮膚がんの心配な人は、マグロやカツオなどの青魚からビタミンDを摂る方法をおすすめします。これらの魚は1切れに300~400単位ものビタミンDが含まれています。特に生活が昼夜逆転している若い方や、家にいることが多い高齢の方も、日光浴により体内でビタミンDを作る代わりに、食事でビタミンDを補うよう努力してください。
予防と治療のヒント

TOPへ戻る